木下直之『美術という見世物』

 出だしの文章は相変わらず流石という他ない。またその着眼点も。
 幕末から明治期において、日本の技術者たちが作り出したものについて、それらが芸術からは抜け落ちていった様を追って行く。江戸時代では様々な技術者がいた。彼らが西欧からのものを導入しつつ、如何に対応していったか。しかしそれらはどうやって振り落とされていったのか。それらを石像、海外の風物を伝えるもの、油絵茶屋、パノラマ、写真油絵、甲冑、写真掛軸といったものを題材にあげていく。
 そこに映し出されるのは、逞しくも自分の技術で対応させていった、または取り込んでいった人々の姿、なのかもしれない。
 とりあえずはどうしてこんなに調べられるのか、どうしてこんなに興味がわくのか、頭を下げるばかり。