文身とはな

maimai9212007-12-19

 いれずみを調べる上で避けて通れない本が何冊かあります。最近のものでは山本芳美先生の『イレズミの世界』(河出書房新社)、礫川全次氏編『刺青の民俗学』(批評社)。そして松田修先生の『刺青・性・死』(平凡社)か。加えて玉林晴朗氏の『文身百姿』(私が持っているのは恵文社版)と吉岡郁夫氏の『いれずみ(文身)の人類学』(雄山閣)です。
 いれずみの表記はイレズミ・刺青と文身が用いられていることがわかります。山本先生がカタカナを用いる理由はちゃんと本に記されております。刺青は昨日述べたように、谷崎潤一郎の『刺青』由来です。で、本日は18日にも述べたように、文身についての簡単なお話。

 いれずみを文身とも書くこと、ご存知の人は多くないと思います。インターネットでこれらの字を引いてみて、文身が少ないことがわかると思います。


 文身が何故いれずみを指すかといえば、理屈は結構簡単です。というのは、文はあやとも読むからでる。あや、といえば「言葉のあや」ともいいますね。このように模様自体のことをあやは指します。このあやが身にまとわっているということを指したのが、文身ということです。身体に直接模様を描くとなれば、まぁいれずみが古代ではオーソドックスだったのでしょう。勿論、ボディーペインティングなんかもありえたわけです。で、これで昨日の瘢痕文身。これも身体に模様を付けていることになります。だから文身の文字を使ってもいいわけです。

 とはいえ、文身を書くといれずみを指すことが多いようです。それは先に挙げた『文身百姿』や『いれずみ(文身)の人類学』がいれずみを扱っていることからもわかります。


 この文身についてはより詳しくは、白川静先生が『中国古代の文化』で述べています。引用しますと、

「文身とは、何らかの儀礼的目的をもって加えられる身体的装飾をいう。
文身の方法には、朱や黒などで一時的に文様を描き加える絵身と呼ばれる方法、皮膚を鋭い針で刺し破り、そこから墨などを皮下に注入する入墨、すなわち黥涅(げいでつ)とよばれる方法、また皮膚に切傷などを加えて、その傷痕を文様化する瘢痕という方法があり、その文身の目的によってそれぞれの方法がとられる。」

 とあります。