夏の匂い

 夏には特有の匂いがある。汗がたまる濃厚な匂いか。草木が水を欲する匂いか。
 その匂いが何者なのかも未だにわからない。徒然だった休みの日々の、持て余した時間、輪郭が溶けてしまいそうな暑さの夜。外部ではなく、私の内部からきたものだったのかもしれない。
『飼育』を夏に読みふけり、「同じ匂い」と、無邪気な悪意と死ぬことに思いを馳せてから、もう10年以上。なんて感傷を思い浮かべる、肌のべたつき