土偶といれずみ

maimai9212007-12-20

 昨日載せた土偶の顔の模様、これをいれずみと見なす説は多いです。こういった説がきちんと出されるようになったのは、明治末期。昨日の大野延太郎の論文が初出だと思います。
 この論文が掲載されたのが、『東京人類学会雑誌』。ここでいれずみが人類学で扱われるブーム(?)がおきます。発端は坪井正五郎。日本の人類学の祖という人です。彼が日本の先住民族はコロボックルだーと言い出したのです。で、北海道に住んでいたアイヌの方々がいれずみをしていることから、いれずみを調べよう!となった次第。
 なお、このコロボックルに関しては大論争(コロボックル論争っていいます)がおき、ショートショートで有名な星新一のおじいさん・小金井良精と坪井正五郎は喧嘩しまくりました。

 こうした経緯で、人類学の中でいれずみが一つのテーマとされた時期がありました。論文(というか報告に近いのだけど)で扱われたいれずみは、中心はアイヌといった北海道の風習ですが、考古学の方面、つまり土偶の顔面模様も対象とされていきました。また、沖縄のハジチも扱われています。


 土偶に関しては、賛否両論があるようです。単なるボディペィンティングではないのか、という意見も。とはいえ、『魏志倭人伝』に「黥面文身」とあることから、いれずみが昔に行われていたことは事実ではあるでしょう。土偶がこの姿を扱ったのかは不明なままですが、そう考えてもよいと私は思います。

 坪井の死後、土偶をはじめとするこの手のネタは静かになります。しかし、今はどうやら土偶の模様=いれずみ?説はある程度支持されているのではないでしょうか???(考古学の人に聞いてみます・汗)日本では皮膚の残った身体がみつからないため、最終的な判断を下すことはおそらく不可能でしょうけれど…

 詳しくは吉岡郁夫先生の「いれずみ(文身)の人類学」や、最近では「黥と渡来人」という中国の方の論文もありますので、そちらを参考に。また私もおいおい何か書くと思いますが…